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「暮らし」「職場環境」「日常活動」の立て直し
この秋のとりくみについて意思統一 全国書記長会議
 

 10月18日~19日、東京都内で2020年度第1回全国書記長会議を開催しました。「暮らし」「職場環境」「日常活動」の立て直しが求められる秋季年末闘争を迎えるにあたり、運動の中心となる全国の書記長が出席して情勢と課題を確認し、この秋のとりくみを意思統一しました。会議は集合・オンラインの併用で実施しました。

情勢

格差の広がりコロナ禍で明らかに 政治が責任を果たすべき

オンライン併用で書記長会議を実施
 開会あいさつで大杉副委員長は、コロナ禍という未曽有の社会状況のもとで迎える秋季年末闘争となることから、「暮らし」の立て直しを図ることが必要と強調しました。
 菅総理大臣は「安倍政権の継承・発展を図る」「めざす社会像は自助、共助、公助」と繰り返し発言していることに対し、「自民党総裁の椅子を争った石破氏や岸田氏がコロナ禍で明らかになった問題を踏まえ、格差が広がっていることや新自由主義がさまざまな批判を浴びてきたことに触れたことと比較しても、これまでの政治のあり方を何ら反省するところがないという点において突出している」と指摘し、「『自助』を強調して政治の責任を投げ出すのではなく、政治が『公助』により、労働者・国民・中小事業者の生活再建を支えるという責任を果たす必要がある」と述べました。

2021年度概算要求

増員からIT化にむけた予算要求にシフト

 簑田書記長は秋季年末闘争方針の報告の中で「職場環境」の立て直しに触れ、秋年期は職場に一番身近な支部の活動が見える時期だからこそ、「全司法の役割を示す機会になる」として、秋の交渉にこだわって職場諸要求の実現をめざそうと提起しました。
 2021年度裁判所予算の概算要求について、人員では「現有人員を有効に活用することによって適正かつ迅速な事件処理を行うことができる」として「判事および事件処理のための書記官の増員を行わない」としたことが最大の特徴だと述べ、最高裁が裁判部の増員にむけた予算要求からIT化にむけた予算要求にシフトさせてきたと指摘しました。裁判部門の充実強化にむけた増員は行わないとの姿勢を示したことから、これまで行われてきた地方から中央・大規模庁へのシフトが続けば、地方の定員削減が止まらない危険性があることから、職場実態にもとづいて適切な人員配置となるよう各地連・支部が下級裁を追及していくことが、この秋、特に重要だと指摘しました。
 電子速記タイプライターについて「予算要求しない」としたことは、一人1台を要求していることからも極めて不十分であり、早期に保守・メンテナンスの契約もされなければ、故障等の不具合の迅速な対応ができず、裁判運営にも支障をきたすとして最高裁を追及していくとしました。
 また、民事事件関係経費に「裁判手続IT化に関する経費」を含めているほか、「新型コロナウイルス感染症への対応など緊要な経費」においても、裁判手続等のIT化関連経費、情報インフラ基盤の整備経費(IT化に向けての機器整備予算)が盛り込まれていると指摘しました。
 そのうえで、裁判所の枠を超えて共同したとりくみが必要な課題として、①公務公共サービスの拡充を求める運動、②国民のための裁判所をめざすとりくみをあげ、国民本位の行財政・司法を確立する国公労連のとりくみへの結集、「全司法大運動」でこれまでのとりくみから一歩踏み出した積極的なとりくみを実践することを求めました。

職場諸要求実現

12月初旬までにすべての地連・支部で交渉実施を

 また、秋季年末闘争は予算確定期にむけて、職場の要求を一つでも多く実現することをめざし、各地連・支部が主人公となって運動を展開する時期であるとし、①対話による要求組織と②12月初旬までにすべての地連・支部で交渉を配置することを求めました。対話による要求組織については、11月2日の週を中心として、11月中に全ての職場で職場会を開催することを提起しました。
 職場諸要求の課題では、最高裁が「今後の方向性」で示している「事務の合理化、効率化を推し進める」「書記官や事務官をはじめとする職員一人一人が本来の役割・職務に注力して専門性を活かすことのできる事務処理態勢を構築する」という考え方について、全司法の要求を正面から受け止めたものであり、今後、これを足がかりに、更なる前進を求めていくことが重要だと強調しました。

組織強化・拡大

脱退防止のためにも日常活動にきちんと取り組むこと

 続いて報告した井上組織部長は「日常活動」の立て直しに触れ、職場における対話活動の充実・強化と組織拡大のとりくみを積極的に行っていこうと呼びかけました。
 職場における対話活動の具体化にあたっては、「新たな組織方針」に基づき、職場会の開催を基本とした対話活動にとりくむことの重要性を指摘しました。とりわけ、4月期新採用職員の加入拡大がすすんでいないことから、コロナ禍で不安を抱えている新規採用職員に寄り添って話を聞くことを重視し、11月末までにすべての支部で4月新採用職員の加入拡大にむけて工夫したとりくみを行うことを提起しました。
 この報告を受け、全体討論は組織強化・拡大から議論を始めました。新採用職員の加入拡大にむけて、例年のように全体での歓迎会が実施できないため、少人数で昼食会を開催したとの報告や、職場会に新採用職員も参加してもらうなどして、職場の先輩組合員も巻き込んだ加入呼びかけを行っているといった工夫例が報告されたほか、採用後数年での脱退を防止することについて意見交換が行われ、そのためにも日常活動にきちんと取り組むことの重要性が改めて確認されました。
 要求課題では、新型コロナウイルス感染拡大に伴う業務縮小やBCP発動、在宅勤務の在り方など、コロナ関連の職場実態が多く報告されました。第2波、第3派の到来に備え、感染症に対応したBC Pの検討をすすめる必要があることや、必要な感染防止対策等は裁判所当局の責任において検討すべきであり、各地連・支部で対応当局との間で振り返りを行う必要性が確認されました。

 
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人事院 月例給「引上げなし」を報告
 

 10月28日、人事院は国会と内閣に対して、「職員の給与に関する報告」を提出しました。
 新型コロナウイルス感染症の影響により民間給与実態調査が遅れていたことを受け、例年より大幅に遅れて、10月7日に一時金の引下げ(0・05月分減)勧告を行ったのに続いて、「引き続き検討」としていた月例給について報告を行ったものです。

官民格差小さく、適切な改定困難

 報告は、民間給与実態調査の結果、国家公務員給与が民間給与をわずかに上回っているが、官民較差が小さく(△164円、△0・04%)俸給表及び諸手当の適切な改定を行うことが困難であることから、俸給表の改定を見送るという結論になっています。
 国公労連は人事院勧告に向けて、①慢性的な人員不足にコロナ関連業務が負荷されいっそう厳しさを増す中で、感染の不安を覚えながらも、国民の生命やくらしを守るために現場第一線で働いている職員の労苦に報いる賃金改善が求められていること、②コロナ禍で落ち込んでいる日本経済を回復させるためには、経済の内需主導型への転換が求められており、最低賃金と同じく社会的影響力を持つ公務員賃金を引き下げることは社会政策上も許されないことなどの情勢に適応した政策判断を行うならば、公務員の賃金引上げは当然だと主張してきました。
 こうした要求からすれば、今回の報告は極めて不満ですが、一方で、ごくわずかとはいえ公務が民間を上回っている較差分(△0・04%)を俸給表の改定に直接反映させなかったことは私たちのたたかいの成果です。

コロナ禍のもと、官民一体の運動がきわめて重要

 報告が出されたことを受けて、私たちの運動は今後、政府との交渉に段階が移ります。コロナ禍の情勢を受けて、公務員賃金に対する引下げ圧力が強まっていることをふまえ、国公労連に結集して、特別給を含めた賃下げを阻止し、あわせて、実効ある長時間労働規制、安心して働ける定年延長の実現など労働条件全般について改善させるとりくみを強化していきます。
 コロナ禍のもとで、公務員賃金を改善するためにも、日本経済を立て直し、中小企業・個人経営、民間労働者やフリーランスも含めたすべての国民が安心して暮らせる状況を作ることが今、きわめて重要になっています。
 2021春闘で全労連等が提起する「コロナ禍だからこそ賃金大幅引き上げ・底上げで、誰もが人間らしく暮らせる社会をつくる」とりくみに結集し、官民共同のたたかいに参加することが重要です。

 
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超勤縮減、ハラスメント防止、感染症対策などの課題で改善を要求
秋季年末闘争期第1回人事局総務課長交渉
 
人事局総務課長交渉の様子

 全司法本部は10月20日、2020年秋季年末闘争における第1回人事局総務課長交渉を実施しました。
 今回の交渉を皮切りに秋季年末闘争における一連の最高裁交渉が始まります。第1回の交渉では、超勤縮減等、健康管理、採用・異動、宿舎改善、次世代育成支援、男女平等・母性保護等の課題で最高裁を追及しました。
 諸要求貫徹闘争における最高裁回答を踏まえ、具体化にむけた追及を強めています。

超勤実態把握は管理職員等による現認が基本

 超勤縮減等の課題では、「組織全体として超勤削減にむけたとりくみをこれまで以上にすすめていきたい」とした上で、「上限規制の導入後においても、サービス残業や持ち帰り仕事については、あってはならない」「超過勤務については、的確かつ遅滞なく把握するよう今後も指導を徹底していきたい」「始業前、昼休み、休日における勤務についても変わるものではない」と従来の基本姿勢を示しました。
 「勤務時間の適正な把握」の徹底を求めたことに対し、最高裁は「管理職員等による現認が基本」としつつ、「管理職員等が不在となる場合には、鍵の授受簿による確認や、事前申告の内容を踏まえて事後に成果を確認するなどの方法により、(中略)それぞれの管理職員等において、的確かつ遅滞なく、超過勤務状況の把握に努めていると認識している」と説明し、「官側が早朝、休日を含め超過勤務の実態を把握する必要があることは当然」と回答しました。国公労連の「超過勤務実態アンケート」の結果もふまえ、超過勤務の把握が自己申告頼りとなっている実態を伝え、下級裁への指導の強化と把握方法の見直しを求めたことに対しては、「下級裁に対する指導を徹底していきたい」と回答しました。

事務の簡素化・効率化 できることから順次速やかに

 事務の簡素化・効率化については、「民事事件および家事事件等について記録編成通達を改正して丁数および記録目録を廃止し、また、予納郵便切手の亡失または損傷等の報告事務の合理化を図るために留意点をとりまとめるとともに参考書式等を作成して配布したところである」「裁判部、事務局を問わず、各種の報告事務等についても、通達等を見直すなどして簡素化・合理化を図ってきている」とこの間のとりくみを説明し、「今後も、通達等の見直しも視野に入れながらできることから順次速やかにとりくんでいきたい」と回答しました。

コロナ対策、得られた情報を下級裁と共有

 健康管理等に関わっては、新型コロナウイルス感染症への対応について、「専門家の助言を得ながら、これまでの裁判所における感染防止対策の効果について確認するとともに、裁判手続や法廷等の特殊性を踏まえた裁判所の感染防止対策の在り方について、検討を開始した」と説明しました。
 また、今後の対応等については、「最高裁としては、今後の政府(専門家会議等)の動向等も注視しつつ、得られた情報については下級裁と適宜共有するなど、必要な対応を行っていきたい」「裁判手続や法廷等の特殊性も考慮した上で、リスクの態様に応じたメリハリのある感染防止策を検討していきたい」と回答しました。
 感染症対策を健康管理懇談会の議題とするよう求めたことに対して、「職員団体から議題として取り上げてほしいという意見が出されたことについては、下級裁に伝えることとしたい」と回答しました。
 カスタマーハラスメントに関する「当事者等対応の流れと留意点」について、「説明できる段階になったら説明することとしたい」と回答しました。

次世代育成「行動計画」で意識調査を検討

 次世代育成支援対策等の課題では、「緊急事態下における業務縮小の経験を踏まえ、これを素材として働き方改革をすすめることが、非常時における業務継続の観点から必要なことであるとともに、平時におけるワーク・ライフ・バランスの推進にも資するものである」と説明し、来年度に予定されている裁判所特定事業主行動計画の改定にあたっては「職員及び職員団体の意見を聞くなど、誠実に対応していきたい」とし、意識調査の実施を検討していることを明らかにしました。

 
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引き続き「適用年齢引下げ反対」を意思統一
2020年度少年法対策会議
 
オンラインで少年法対策会議

 10月3日、少年法対策会議を開催しました。今年度は新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、オンライン開催となりました。
 少年法の適用年齢については、9月9日に開催された法制審議会少年法・刑事法部会において「取りまとめ(案)」が賛成多数で可決されました。これが法制審総会に「答申(案)」として報告され、来年の通常国会にも少年法「改正」法案が提出される見込みです。
 こうした大きな局面変化があったもとで、これまでの経過と到達点を確認し、引き続き適用年齢引下げ反対のとりくみをすすめる方針と決意を固める絶好の機会となりました。

家裁への全件送致維持は「大きな成果」

 最初に、日弁連子どもの権利委員会副委員長の金矢拓弁護士から法制審議会の審議経過と今後の運動について報告を受けました。
 金矢弁護士は、昨年11月の法制審部会から議論の流れが変わり、一方で自民・公明の与党PTでの議論がすすめられるもとで、「答申(案)」が出された経過を報告。その内容と、日弁連の評価を説明されました。
 原則検送事件の拡大など、「答申(案)」には様々な問題が含まれていることを指摘し、今後の運動について、①実務経験(具体的エピソード)に基づく説得力のある発信、②全件送致の確保などを確実なものに、③強盗に関する原則逆送基準・運用での実質の確保(柔軟な運用)の3点が重要だと指摘されました。

「健全育成」と「改善更生」は全く異なる

 その後、外部からのスピーカーを招いてのディスカッションを実施しました。
 最初に問題提起をした一橋大学教授の葛野尋之さんは「18・19歳を対象とした制度の目的が『健全育成』か『改善更生』かでは全く異なる」として、そこが明確になっていない「答申(案)」の矛盾を指摘しました。また、「精神的成熟には知的成熟と情緒的成熟があって両者は別物である。民法の『成年』は『大人のはじまり』を意味しており、少年法の『少年』とは矛盾しない」としました。
 神戸女学院大学教授の佐々木光明さんは「与党PTの動きを見ていると、研究者集団としての法制審の主体性が確保できているのか疑問を持っている」、被害者団体代表の片山徒有さんは「白紙に戻して議論し、保護主義を中心に据えた少年法を作って欲しい」、ジャーナリストの佐々木央さんは「推知報道の解除が原理的な議論やメディア全体の状況と関係なく決まってしまった」と発言しました。

「少年法の実態」を繰り返し、粘り強く訴える

 参加者からは「会議に参加して、問題点が良くわかった」等の感想が出される一方で、「職場の関心が薄い」「少年法に対する『誤解』『思い込み』に基づく世論が強い中で、問題を伝えていくのが難しい」との意見も出されました。本部の中矢委員長は「世論が厳しい、職場の関心が集まらないという状況は一貫して存在しているが、その中でも当初の流れを変えることができた。これまでやってきたことに自信を持って、引き続き粘り強く、繰り返し、とりくみを続けていこう」と呼びかけました。

法制審議会「答申(案)」の概要

1 年齢区分について
 「…刑事司法制度において18歳未満の者とも20歳以上の者とも異なる取扱いをすべきである。」「その上で、18歳及び19歳の者の年齢区分の在り方やその呼称については、国民意識や社会通念等を踏まえたものとすることが求められることに鑑み、今後の立法プロセスにおける検討に委ねるのが相当である。」

2 要綱(骨子)
(1) 全件家裁送致
 「罪を犯した」18歳及び19歳の者に対する処分及び刑事事件の特例等を定めるので、ぐ犯は設けない
(2)検察官送致決定
 行為時18歳以上の場合、原則逆送の対象事件を、短期1年以上の懲役・禁錮の事件(強盗罪や強制性交罪を含む)まで拡大。「ただし書き」の逆送しない場合の考慮要素として、「犯行の結果」を追加
(3)処分決定
ア 処分については、「犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内において行わなければならない」として行為責任によって上限を画する。
イ 処分の種類
(ア)保護観察所の保護観察(仮称)で、施設収容の可能性がないもの
(イ)保護観察所の保護観察(仮称)であって、遵守事項違反があった場合に「処遇施設収容」をすることができるもの
(ウ)処遇施設送致
(4)処分に関するその他の規律
(略)
(5)刑事手続の特例等
ア 検察官送致決定のあった事件について起訴強制制度(少年法と同じ)
イ、ウ (略)
エ 刑事裁判所が事実審理の結果、家裁での処分が相当と認めるときは、家移送する決定をしなければならない(少年法と同じ)。
オ 推知報道の一部解禁 … 行為時18歳以上の場合、「当該罪により公判請求された場合」推知報道を解禁。
カ その他 … 不定期刑、換刑処分の禁止(労役場留置)、仮釈放に関する特則、資格制限に関する特則については、記載なし(適用されない)。

3 附帯条項・今後の課題(望まれる事項)
ア ぐ犯を適用しないことの対応として、行政や福祉の分野における各種支援
イ 就業や資格取得の制限の在り方の早急な検討
ウ 施行後、一定期間の運用の実績が蓄積された段階での多角的な検討

 
 
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