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オンラインで少年法対策会議 |
10月3日、少年法対策会議を開催しました。今年度は新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、オンライン開催となりました。
少年法の適用年齢については、9月9日に開催された法制審議会少年法・刑事法部会において「取りまとめ(案)」が賛成多数で可決されました。これが法制審総会に「答申(案)」として報告され、来年の通常国会にも少年法「改正」法案が提出される見込みです。
こうした大きな局面変化があったもとで、これまでの経過と到達点を確認し、引き続き適用年齢引下げ反対のとりくみをすすめる方針と決意を固める絶好の機会となりました。
家裁への全件送致維持は「大きな成果」
最初に、日弁連子どもの権利委員会副委員長の金矢拓弁護士から法制審議会の審議経過と今後の運動について報告を受けました。
金矢弁護士は、昨年11月の法制審部会から議論の流れが変わり、一方で自民・公明の与党PTでの議論がすすめられるもとで、「答申(案)」が出された経過を報告。その内容と、日弁連の評価を説明されました。
原則検送事件の拡大など、「答申(案)」には様々な問題が含まれていることを指摘し、今後の運動について、①実務経験(具体的エピソード)に基づく説得力のある発信、②全件送致の確保などを確実なものに、③強盗に関する原則逆送基準・運用での実質の確保(柔軟な運用)の3点が重要だと指摘されました。
「健全育成」と「改善更生」は全く異なる
その後、外部からのスピーカーを招いてのディスカッションを実施しました。
最初に問題提起をした一橋大学教授の葛野尋之さんは「18・19歳を対象とした制度の目的が『健全育成』か『改善更生』かでは全く異なる」として、そこが明確になっていない「答申(案)」の矛盾を指摘しました。また、「精神的成熟には知的成熟と情緒的成熟があって両者は別物である。民法の『成年』は『大人のはじまり』を意味しており、少年法の『少年』とは矛盾しない」としました。
神戸女学院大学教授の佐々木光明さんは「与党PTの動きを見ていると、研究者集団としての法制審の主体性が確保できているのか疑問を持っている」、被害者団体代表の片山徒有さんは「白紙に戻して議論し、保護主義を中心に据えた少年法を作って欲しい」、ジャーナリストの佐々木央さんは「推知報道の解除が原理的な議論やメディア全体の状況と関係なく決まってしまった」と発言しました。
「少年法の実態」を繰り返し、粘り強く訴える
参加者からは「会議に参加して、問題点が良くわかった」等の感想が出される一方で、「職場の関心が薄い」「少年法に対する『誤解』『思い込み』に基づく世論が強い中で、問題を伝えていくのが難しい」との意見も出されました。本部の中矢委員長は「世論が厳しい、職場の関心が集まらないという状況は一貫して存在しているが、その中でも当初の流れを変えることができた。これまでやってきたことに自信を持って、引き続き粘り強く、繰り返し、とりくみを続けていこう」と呼びかけました。
法制審議会「答申(案)」の概要
1 年齢区分について
「…刑事司法制度において18歳未満の者とも20歳以上の者とも異なる取扱いをすべきである。」「その上で、18歳及び19歳の者の年齢区分の在り方やその呼称については、国民意識や社会通念等を踏まえたものとすることが求められることに鑑み、今後の立法プロセスにおける検討に委ねるのが相当である。」
2 要綱(骨子)
(1) 全件家裁送致
「罪を犯した」18歳及び19歳の者に対する処分及び刑事事件の特例等を定めるので、ぐ犯は設けない
(2)検察官送致決定
行為時18歳以上の場合、原則逆送の対象事件を、短期1年以上の懲役・禁錮の事件(強盗罪や強制性交罪を含む)まで拡大。「ただし書き」の逆送しない場合の考慮要素として、「犯行の結果」を追加
(3)処分決定
ア 処分については、「犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内において行わなければならない」として行為責任によって上限を画する。
イ 処分の種類
(ア)保護観察所の保護観察(仮称)で、施設収容の可能性がないもの
(イ)保護観察所の保護観察(仮称)であって、遵守事項違反があった場合に「処遇施設収容」をすることができるもの
(ウ)処遇施設送致
(4)処分に関するその他の規律
(略)
(5)刑事手続の特例等
ア 検察官送致決定のあった事件について起訴強制制度(少年法と同じ)
イ、ウ (略)
エ 刑事裁判所が事実審理の結果、家裁での処分が相当と認めるときは、家移送する決定をしなければならない(少年法と同じ)。
オ 推知報道の一部解禁 … 行為時18歳以上の場合、「当該罪により公判請求された場合」推知報道を解禁。
カ その他 … 不定期刑、換刑処分の禁止(労役場留置)、仮釈放に関する特則、資格制限に関する特則については、記載なし(適用されない)。
3 附帯条項・今後の課題(望まれる事項)
ア ぐ犯を適用しないことの対応として、行政や福祉の分野における各種支援
イ 就業や資格取得の制限の在り方の早急な検討
ウ 施行後、一定期間の運用の実績が蓄積された段階での多角的な検討
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