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全司法新聞
 
どこが「改革と成長」か 2008年政府予算案
社会保障2200億円圧縮 消費税増税へ「橋渡し」
 
 福田内閣は12月24日、08年度予算政府案を閣議決定しました。社会保障費の伸びは今後も毎年2200億円ずつ圧縮し続けながら、消費税増税へ「橋渡し的な位置付け」(額賀福志郎財務相)をした予算案です。
 額賀財務相は、「改革と成長の予算だ」と呼びましたが、正に「構造改革」路線にしがみつき、大企業の「成長」と社会保障切り捨てをすすめるものとなっています。

 政府案は、予算全体の規模を示す一般会計総額が、07年度当初予算比0・2%増の83兆613億円となり、2年連続の増額です。政策的経費である一般歳出は、総額で、同0・7%増の47兆2845億円となりました。
 大企業は空前の利益を維持しているものの、原材料費の高騰や経済の先行き不透明感の高まりをうけ、税収は53兆5540億円(対07年度当初予算比0・2%増)にとどまりました。
 福田内閣は、「骨太の方針2006」に基づき、2200億円に及ぶ社会保障の自然増圧縮を08年度予算でも実施しました。こうした歳出削減の結果、国債の新規発行額は、25兆3480億円と4年連続で減額となりました。

マスコミも批判
票とりのためばらまき

 医師の収入に直結する「診療報酬本体部分」を、日本医師会の強い要望で、8年ぶりに増額。地方に配分する地方交付税も同1・3%増の15兆4061億円で、3年ぶりに増やしました。民主党が掲げた農家への1兆円の所得補償に対抗し、07年度補正予算で農家向けの助成金拡大などに799億円を計上。高齢者の医療費負担増を野党に批判され、凍結のための1719億円も補正予算に盛り、マスコミからも「目立つのは、票の獲得につながる利害関係者へのばらまきだ」(朝日新聞)と批判されています。

借金は776兆円に
 国と地方の借金(長期債務残高)は08年度末で776兆円程度まで膨らむ見込みです。
 この借金は、アメリカの外圧を受け、生活密着型の公共事業を厳しく抑制する一方で、大型公共事業中心の「経済対策」を実施してきた結果です。
 来年度予算案で、公共事業関係費は対前年度比3・1%減ですが、スーパー中枢港湾などの大型公共事業は軒並み増額し、一方、地方港湾や住宅、下水道のための予算は削減しています。

大企業への減税
財政危機に拍車

 80年代半ばに43・3%だった法人税の基本税率は、段階的に引き下げられ、現在30%になりました。所得税の最高税率も、段階的に引き下げられてきました。
 このような大企業や大資産家に対する数々の減税策が、税収の空洞化を招き、「財政危機」に拍車をかけています。
 与党は08年度税制「改正」でも、研究開発減税の拡充や減価償却制度「見直し」など、いっそうの大企業減税を提起しており、証券優遇税制の一部温存・拡充など資産家減税も維持しようとしています。

防衛費5兆円
どこが「聖域なき」か

 「聖域なき防衛関係費の見直し」を掲げながら、08年度予算案でも5兆円規模の軍事費を維持しました。
 軍事費は、海外派兵型装備の拡充にともなって膨れ上がってきました。08年度予算案でも、海外展開可能な次期哨戒機の調達経費を計上。在日米軍再編経費も大幅増額し、在日米軍への「思いやり予算」も、2083億円とわずか90億円の削減にとどまりました。

構造改革のゆきづまりは明確
 「構造改革」路線を財政面で具体化した2006年の「骨太方針」は社会保障を歳出抑制の標的とし、消費税増税を税制「改革」の柱にしながら、経済成長によって税収を増やすという方針を打ち出しました。
 高齢化に伴う社会保障の増加を無理やり抑える「構造改革」路線は、貧弱な社会保障を底割れさせ、「医療難民」「介護難民」などを生み出しています。
 ゆきづまりが明確になっている「構造改革」路線への固執こそ、くらしと経済を立て直す最大の障害となっています。
 桝添厚労相でさえ、社会保障費の削減は限界だと表明しているほどで、これ以上の庶民負担の増大は許されません。
 米軍への「思いやり」予算をやめれば、即座に2000億円の財源を生みだし、生活保護の命綱である「母子加算」の段階廃止は兵器価格の水増しを一部改めるだけで中止できます。
 浪費をなくし、ゆきすぎた大企業・大資産家減税と軍事費の「2つの聖域」にメスを入れれば、消費税増税なしで、社会保障の財源を生み出し、財政再建の道も開けます。
 
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08春闘 基本権回復署名に全力
牧山書記長に聞く
 
 非正規労働者への置き換えをはじめとする「働くルール」の破壊により、貧困と格差が拡大しています。
 私たちの「貧困撲滅」をめざすたたかいのなかで、07年は、約10年ぶりとなる最低賃金の2桁引き上げ、8年ぶりの公務員賃金の一部改善を勝ち取り、「貧困撲滅」の足がかりとなる重要な成果をあげることができました。08春闘では、この流れを更に大きくしていくことが期待されています。
 そこで、牧山書記長に、08春闘の課題と全司法のたたかいについて聞きました。

最低生活保障に全力

08春闘の課題とたたかいの構えは?
 「構造改革」を推進する政府・財界は、いわゆるトリックル・ダウン理論(企業が潤えばその利益が滴り落ち労働者の生活も向上するとの説)を掲げて、国民・勤労者に、大企業成長政策への協力と格差の認容を求めてきました。
 しかし、企業収益が伸びてもその「果実」は賃金に還元されず、民間給与は9年連続してダウンしています。また、景気対策減税等で大企業の税負担が軽減される一方、勤労者の所得税や社会保障負担は伸び続けており、「企業収益」と「格差と貧困」が、同時に拡大しています。燃料・穀物の高騰による物価上昇も不安材料となっています。
 こうしたなか、年収200万円以下の給与所得者が1000万人を超える等格差と貧困が拡大し、トリックル・ダウン理論の破綻が明らかとなりました。
 「ワーキング・プア」と呼ばれる働く貧困層の広がりは、「構造改革」の当然の帰結であり、労働組合が中心となって社会的連帯を広げながら、このような社会構造を転換させていく必要があります。
 全労連の掲げる「なくせ貧困、ストップ改憲!つくろう平和で公正な社会」のスローガンのもと、全司法は、「総対話と学習、全員結集、地域共同」を合言葉に、国公労連、ブロック・県国公への結集を軸としながら、全国津々浦々の職場・地域から、「国民春闘」の一翼を担っていきたいと思います。

公務労働者と08春闘

公務員労働者の具体的な関わり方は?
 格差と貧困の拡大を押し止めるためには、全ての労働者の賃金の底上げを図る必要があります。全ての労働者の賃金の底上げをめざして、官民共同のとりくみを追求しますが、とりわけ、「官製ワーキング・プア」と呼ばれる公務職場における非正規労働者の賃金・労働条件の改善と、公契約運動(公共工事設計労務単価の引上げや人件費を無視したダンピング規制等)が今後の課題となっています。

社会的連帯を広げていくために必要なことは?
 与党の税制大綱は、消費税を含む「抜本改革」の時期を09年度としました。
 日経連の08年版「経労委報告」は、「ワーク・ライフ・バランス」という表現で、ホワイトカラー・イグゼンプション等の導入を進めようとしています。
 テロ特措法の審議では、「恒久法」制定の動きも見られました。こうした動きと関わって、9条改憲の動きも予断を許しません。
 「構造改革路線」と対峙し、国民・住民の期待に応える公務公共サービスをどのように提供していくかは、国民のくらしを助ける予算編成を実現するたたかいと一体でとりくんでいく必要があり、08年春闘期の重要課題となります。
 国民の安全を守り、くらしを安定させるためのあらゆる問題に、公務労働組合が正面からとりくんでいくことが必要だと考えています。

民主的公務員制度にむけて

労働基準権回復をはじめとする民主的公務員制度確立の課題は?
 08春闘の最重要課題と位置づけています。
 通常国会前半では、来年度予算案が最大の争点となるでしょうから、「国民・住民本位の公務公共サービスと予算編成を実現するたたかい」が求められます。国会後半では、「公務員制度改革基本法」や労働基準法改正法案等の審議が行われると考えられますから、「労働基本権の全面回復に向けたたたかい」が求められます。
 私たちは、この間の「構造改革」とのたたかいのなかで、「国民との連帯なしに公務員の労働条件改善も権利拡充もない」ことを経験しました。「貧困撲滅春闘」「底上げ春闘」を国民と共同してたたかいながら、具体的な予算編成の過程でも国民生活としっかりと結びつき、「公務員の労働基本権回復が、国民・住民本位の公務公共サービスと予算を実現するためのたたかう武器となる」ことを、広く国民に理解してもらう必要があります。
 そのためにも、08春闘における最重要課題として提起している「公務・公共サービス拡充署名」を、具体的な課題や運動と切り結びながら、1人5筆以上集約することが不可欠です。
 「赤パンフ(全ての公務労働者に労働基本権の確立を)」等も活用しながら、あらためて署名の完遂に向けたみなさんのご尽力を呼びかけます。
 
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経労委報告批判
 

 財界のトップ団体の日本経団連は12月19日、08年版経営労働政策委員会報告を出しました。経営側の春闘対策方針とよばれるものです。
 今回のテーマは「生産性に見合った人件費決定とワーク・ライフ・バランスの実現」です。しかし展開している内容は、部分的な譲歩はあるものの、労働者の状態改善に背を向けた異常なものです。
 まず賃金については「横並びで賃金を引き上げていく市場横断的なベースアップは、すでに過去のものになっており、もはやありえない」と断言しています。
 業績がいいときは一時金への反映にとどめ、賃金ベース(基準)のアップ、つまり本来の意味の賃上げはやらないという従来の主張をくりかえしています。
 企業が栄えれば労働者・国民の生活は良くなるとする「経労委報告」は、その基本的な認識からして誤っています。大企業の業績があがれば「その滴が労働者に垂れる」どころか、「貧困と格差」はますます拡大してきました。
 日本の大企業はバブル期をこえる空前の利益をあげています。資本金10億円以上の企業の経常利益は01年から06年までの5年間で約2倍に増えました。役員報酬も約2倍、株主への配当金は約4倍に増えています。
 一方、労働者の賃金は、増えるどころか1兆4千億円も減っています。
 経労委報告は、批判が大きい労働分配率問題にあえて「付言」し、日本は高い水準にあるなどと反論していますが、実際は先進国中最低であり、完全なウソです。
 労働者にたいする冷酷な姿勢を真剣に反省し、日本経済の健全な発展へ大企業の社会的責任をもっと果たすべきです。

 もう一つのテーマである「ワーク・ライフ・バランスの実現」(仕事と生活の調和)では、「自らのライフスタイルに合った働き方」などの美しい言葉を使いながら、労働法制改悪についての日本経団連の従来の主張を繰り返しています。
 断念に追い込まれたホワイトカラー・イグゼンプション制度の言い換えにしか過ぎない「自主的・自律的な時間管理を可能とする制度」の導入、労働者派遣制度の規制緩和、職業紹介事業の民間開放などの主張は、企業の社会的責任に背を向けるものです。
 「人間らしい労働と生活」の実現はいまや国民的大義です。大企業の横暴を許さないたたかいが重要です。

 
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