財界のトップ団体の日本経団連は12月19日、08年版経営労働政策委員会報告を出しました。経営側の春闘対策方針とよばれるものです。 今回のテーマは「生産性に見合った人件費決定とワーク・ライフ・バランスの実現」です。しかし展開している内容は、部分的な譲歩はあるものの、労働者の状態改善に背を向けた異常なものです。 まず賃金については「横並びで賃金を引き上げていく市場横断的なベースアップは、すでに過去のものになっており、もはやありえない」と断言しています。 業績がいいときは一時金への反映にとどめ、賃金ベース(基準)のアップ、つまり本来の意味の賃上げはやらないという従来の主張をくりかえしています。 企業が栄えれば労働者・国民の生活は良くなるとする「経労委報告」は、その基本的な認識からして誤っています。大企業の業績があがれば「その滴が労働者に垂れる」どころか、「貧困と格差」はますます拡大してきました。 日本の大企業はバブル期をこえる空前の利益をあげています。資本金10億円以上の企業の経常利益は01年から06年までの5年間で約2倍に増えました。役員報酬も約2倍、株主への配当金は約4倍に増えています。 一方、労働者の賃金は、増えるどころか1兆4千億円も減っています。 経労委報告は、批判が大きい労働分配率問題にあえて「付言」し、日本は高い水準にあるなどと反論していますが、実際は先進国中最低であり、完全なウソです。 労働者にたいする冷酷な姿勢を真剣に反省し、日本経済の健全な発展へ大企業の社会的責任をもっと果たすべきです。 もう一つのテーマである「ワーク・ライフ・バランスの実現」(仕事と生活の調和)では、「自らのライフスタイルに合った働き方」などの美しい言葉を使いながら、労働法制改悪についての日本経団連の従来の主張を繰り返しています。 断念に追い込まれたホワイトカラー・イグゼンプション制度の言い換えにしか過ぎない「自主的・自律的な時間管理を可能とする制度」の導入、労働者派遣制度の規制緩和、職業紹介事業の民間開放などの主張は、企業の社会的責任に背を向けるものです。 「人間らしい労働と生活」の実現はいまや国民的大義です。大企業の横暴を許さないたたかいが重要です。