離婚後共同親権をはじめ、変革期の裁判所の人員体制整備を求める決議
今年4月、改正民法が施行され、離婚後の選択的共同親権の導入など、家庭裁判所における新たな制度が始まる。共同親権の導入については、特にDV・虐待被害者や支援者等から強い反対・懸念が出る中で法案が作成され、国会審議でも様々な問題点が指摘されたが、その多くが運用に委ねられ、審議状況を反映した附帯決議が付された経緯がある。新制度実施にあたっては、「子の利益」が確実に保護されるよう運用することがきわめて重要である。
こうした運用を支える最大の保障が、家庭裁判所への人員配置であり、全司法はこの間、家裁調査官の3桁の増員をはじめとする人員体制整備が必要不可欠であると強く要求してきた。改正法の附帯決議においても、「改正法により家庭裁判所の業務負担の増大及びDV・虐待のある事案への対応を含む多様な問題に対する判断が求められることに伴い、家事事件を担当する裁判官、家事調停官、家庭裁判所調査官等の裁判所職員の増員(中略)子が安心して意見陳述を行うことができる環境の整備など、必要な人的・物的な体制の整備に努めること」とされている。それにもかかわらず、最高裁は家裁調査官について、令和7年度予算では全国でわずか5人を増員したにとどまり、令和8年度予算案でも全国で10人の増員を要求するにとどまっている。
最高裁は「紛争解決にあたって子の意向等を確認する必要がある局面」において「家裁調査官が関与すべき場面が多い」としている。しかし、家裁調査官による関与は子の意向調査に限られないうえ、子の意向等を把握するにあたっては、単にその陳述を聴取するのでは足りず、子が置かれている状況の把握や、意向等の考慮に向けた親への情報提供等が必要となる。調停委員研修の企画運営も含めて専門的知見を活かして解決のプロセス全体に関与している実態があり、最高裁の認識が「子の陳述聴取」だけを切り取る趣旨であれば、それは実務において家裁調査官が発揮している役割、機能の実態に沿わない。
また、裁判官も、事件の受付や進行管理を担う書記官もいずれも増員を行わず、裁判を下支えする事務官等を削減するなど、職員全体では、令和8年度予算案で54人の減員となっている。
一方、5月からは民事裁判デジタル化の「フェーズ3」が始まり、2027年3月までに施行される刑事裁判デジタル化の検討も本格化する。こうした大きな変革期にある今、それを乗り切るため、人員体制は必要不可欠である。しかし、最高裁は「国家公務員の定員をめぐる情勢が依然として厳しい中で財政当局や国民の理解を得る」ためとして、人員削減をすすめる姿勢を取り続けている。こうした中、裁判所の職場ではメンタル不調による病休者が増加するなど、全国から「これ以上の減員は限界だ」との切実な増員要求が寄せられている。
私たちは職員の労働条件を守ることはもとより、大きな変革期を迎える裁判所において「国民のための裁判所」実現する立場から、裁判官を含めた各職種の増員による体制整備を強く求めるものである。
以上、決議する。
2026年1月17日
全司法労働組合第86回中央委員会
2026年春闘アピール
労働者・国民の生活は、物価高騰が長期化するもとで、依然として厳しい状況が続いている。物価高騰が賃金の伸びを上回り、実質賃金の低下が続くなか、2026年春闘では生活改善につながる大幅賃上げを実現することが重要である。同時に、物価高のもとで賃上げを求める声が社会に広がっている今、その声を一つにまとめ、要求として形にし、実現につなげていく主体として、労働組合がその役割を発揮することが強く求められている。
しかし、運動の成果があっても、「誰かがやってくれた」と受け止められてしまえば、その成果は次の要求やさらなる改善につながらず、要求も組織も前に進まない。賃上げについても、「誰かがやってくれる」という他人事の意識を変え、すべての労働者の賃上げを求めて地域のとりくみに足を踏み出すことを通じて、要求や組合活動を「自分事」として捉える仲間を増やすことが、2026年春闘の大きな課題である。
そのために重要なのが「対話」である。一方的に説明するのではなく、尋ね、考え、言葉にする過程を通じて、要求や組合活動を自分事として捉えていく。その積み重ねが、職場で声を上げることや活動にかかわることへの参加を生み、行動につながる。対話でつながり、学習で深めることを通じて、みんなが行動する春闘をつくり出していこう。
2025年も、私たち労働組合のとりくみによって、職場が着実に変わった。34年ぶりとなる3%超の賃上げの実現をはじめ、非常勤職員の休暇・休業制度の大幅な改善、電子レンジの支給、民事立会書記官等のパソコンのスペック向上、15分単位の年次休暇の新設などの要求が次々と実現した。これらは、組合員一人ひとりの声と行動を積み重ねてきた成果である。だからこそ春闘を通じて、「自分が参加して勝ち取った」という実感を、さらに広げていくことが重要である。
一方、職場を取り巻く状況は、これから一層厳しさを増す。2026年4月1日には共同親権を含む改正民法が施行され、同年5月には民事訴訟手続のデジタル化フェーズ3が全面施行される。さらに、2027年3月までに刑事手続のデジタル化の導入も控え、裁判所全体の業務量と負担の増大は避けられない。国民の期待に応える「国民のための裁判所」を実現するためには、人的・物的体制の抜本的な充実が不可欠である。全司法大運動を軸に、職場実態を職場内外に発信し、増員に消極的な最高裁の姿勢を転換させていこう。
こうした課題を乗り越え、要求を前進させていくためには、その力の源である組織の規模を広げることこそが重要であり、2026年春闘では組織の強化・拡大を最重要課題に位置づける。全司法は「仲間を増やす」「参加する人を増やす」「担い手を増やす」という組織方針のもと、373人の組合員拡大を、やり遂げなければならないミッションとして掲げている。春闘期から全ての地連・支部が全力をあげ、対話を通じて仲間を増やしていこう。
あわせて、「TUNAG For Zenshiho」を対話のツールとして積極的に活用し、組合員全員登録をめざして、楽しく元気になれるつながりを全国に広げる。とりわけ4月期の新採用職員については、ファーストアタックをやりきるとともに、加入者・未加入者それぞれに対するセカンドアプローチを一体で進め、早期加入と定着につなげていく。
今こそ、団結の力で賃上げと職場改善を前進させ、そして何より組織の強化・拡大を実現する時である。2026年春闘を、私たち自身の春闘として、ともに奮闘しよう。
2026年1月17日
全司法労働組合第86回中央委員会
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