2024年9月6日
全司法労働組合
書記長 井上 隆博
最高裁は8月30日、2025年度当初予算の概算要求として総額3479億3300万円の予算要求を行った。裁判手続等のデジタル化関連経費として257億1500万円を計上するなど、前年度比5.1%増の予算となっているが、政府全体の2025年度当初予算の概算要求総額が過去最大の117兆円を超える中、裁判所の予算は国家予算の0.3%にも満たない額となっている。裁判手続のデジタル化をすすめるための予算としてはあまりに少ない。従前の規模の裁判所予算でデジタル化をすすめようとすれば、裁判所の運営のために本来必要な予算を削らなければならなくなり、そうした状況では、適正・迅速な裁判を行うという国民の期待に応えることはできない。
5月17日、第213通常国会において、共同親権の導入等を含む民法改正案が可決・成立し、今後2年以内に施行されることとなった。共同親権の導入については賛否両論があり、様々な議論が行われてきたが、職場からは、離婚に際して葛藤が高まった父母が協力態勢を築くことの難しさ、共同親権が相手方や子どもを支配したり、あえて行動を妨害し、攻撃するための手段として用いられる懸念、共同親権を定めることが事案の解決につながらず、むしろ、紛争を長期化させたり、新たな火種になる危惧などが示されている。同法案は、DV被害者をはじめ、多くの国民から反対や不安の声が湧きおこる中での成立となった。加えて、共同親権の導入にあたっては、賛否いずれの立場からも家庭裁判所の体制整備が求められた。
こうした国会審議を反映するかたちで、採決の際には衆議院で12項目、参議院で15項目の附帯決議がつけられており、「家庭裁判所の業務負担の増大及びDV・虐待のある事案への対応を含む多様な問題に対する判断が求められる」とした上で、「家事事件を担当する裁判官、家事調停官、家庭裁判所調査官等の裁判所職員の増員」などの「必要な人的・物的な体制の整備に努めること」が裁判所に求められている。
最高裁は、2025年度当初予算の概算要求で「改正家族法の成立を受けて、各庁において法の趣旨・内容を踏まえた的確な調査が行われるよう、具体的な調査のあり方を含め、その円滑な施行にむけた検討・準備を行う」と説明しているが、子の意思把握等の重要な役割を担う家庭裁判所調査官は全国でわずか5人の増員にとどまり、裁判官の増員要求はしていない。加えて、書記官など、各地の裁判の職場で働く職員は38人を減員するとしており、これでは国民の負託に応える体制を整備することはできない。
そもそも家庭裁判所は今でも繁忙で、職場からは切実な増員要求が出されている。こうした状況のもとで共同親権等の改正民法に基づく事務が加わることを考えれば、大幅増員は待ったなしの状況である。改正民法の施行にむけて、家庭裁判所の体制整備をはかるため、2025年度政府予算の成立にむけて、家庭裁判所調査官の追加要求を含む大幅増員を求めていく。
以 上
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