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司法制度改革
 
裁判員制度の制度設計に関する全司法の見解
2002年12月17日
全司法労働組合中央執行委員会
 

裁判員制度に国民の意見反映を

 重大な刑事裁判に一般の国民が参加する裁判員制度は現在、政府の司法制度改革推進本部において、2004年通常国会への法案提出に向けた議論が行われている。推進本部の検討会では、裁判官と裁判員の構成比や人数、裁判員の訴訟上の権限等が議論の焦点となっており、これまでに最高裁を含む関係機関等のヒアリングも行われているが、検討会でも様々な意見が示され、その方向性はいまだ定まっていないのが現状である。

 このような状況のもとで島田仁郎最高裁判事は11月7日、就任にあたっての記者会見で裁判員制度について、「あまりに大人数だと実質的な合議ができず、ある程度こぢんまりした規模が良いのでは」との見解を示した。

 また、経済人や学者、ジャーナリストを中心とし、矢口洪一元最高裁長官も運営委員として参加する「司法改革国民会議」は11月11日、「今後導入される裁判員制度では、裁判官1人、裁判員11人の構成が望ましい」とする提言をまとめた。

 この司法改革国民会議の提言に対して田中康久仙台高裁長官は11月15日、就任にあたっての記者会見で、「(裁判員は)もう少し少なくないと結論が出ないのではないかと思う」との見解を示し、さらに「裁判員は陪審と違い、質問もしてもらうし、結論も出してもらわねばならない。それにこの人数で対応できるのかという問題もある」として、訴訟手続きにおける裁判員の役割にまで踏み込んだ観点からの発言をしている。

 刑事裁判における裁判員制度の導入は、審議会においても陪審制や参審制も含めた議論を経てまとめられたものであり、その評価においてなお様々な意見があるものの、裁判手続きへの国民参加の拡大という面で、司法の民主化に向けて積極的な意義をもつものである。同時に審議会の議論でも焦点となった裁判官と裁判員の構成比や人数については合意が得られず、その結論は今後の検討に持ち越された形となっている。

 裁判員制度の導入という審議会の意見書を受け、日弁連や市民団体を中心に全国各地で模擬裁判やシンポジウム等が開催され、裁判員制度をとおして市民に身近な司法を実現していこうとする運動が広がっている。そうした運動の中でも、裁判官と裁判員の構成比や人数をどうしていくのかが、裁判員制度の運用の上で決定的に重要な要素となることが改めて明らかとなり、そのことが検討会の議論にも反映してきている。

 このような経過のもとで、裁判員制度の具体的な制度設計のあり方は、形式的には国会において可決された司法制度改革推進法に基づき設置された推進本部における法案化に向けた議論に委ねられるべきであり、実質的には日弁連や市民団体等の広範な国民の意見や運動が反映されるべきである。司法改革国民会議の提言もその一環に位置付けられるものであるが、このような議論に現職の裁判官、しかも最高裁判事や高裁長官という地位にある裁判官が、最も焦点となっている裁判官と裁判員の構成比や人数について発言することは、その主観的な意図にかかわらず慎重に対応すべきである。司法制度をどのように改革するかは、あくまでも主権者たる国民と、その最高機関である国会が決定すべき事柄であり、その決定の過程に、司法の運営に責任を負う裁判所や裁判官が職権上の影響力を行使すると受けとられるような事態は避けるべきである。

 全司法は司法制度改革に向けた「政策と要求」において、裁判員制度について「より多くの国民の意見反映が可能となるような仕組みと裁判員の人数を確保すべきです」との提言を明らかにしている。私たちはその立場を基本に、司法の民主化につながる裁判員制度の実現に向けて、司法労働者として引き続き努力するものである。

以上
 
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