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司法制度改革

どうなる司法制度改革 !? どう変わる仕事と職場
司法制度改革司法制度改革審議会意見書の分析と評価
管轄権変更の問題点と課題

人事訴訟の家庭裁判所への移管

 今回の意見書で裁判所制度はどうなるのでしょうか。意見書では地方裁判所、家庭裁判所及び簡易裁判所の大幅な管轄権の変更を提案しています。管轄権変更の基本は地方裁判所の事件数をできるだけ減らし、地方裁判所の「専門特化」と「迅速化」をはたそうとするものです。(下図参照)まず地方裁判所は、医療・労働・行政等の「専門部」と「迅速部」に大別されます。その上で、本来、地方裁判所が管轄していた人事訴訟及び人事訴訟に関わる損害賠償請求、その他家庭関係事件(現在は遺産分割訴訟が検討されている)の家庭裁判所への移管が行われます。また、未確定ではありますが、簡易裁判所の事物管轄を現在の訴額90万円から150〜300万円前後まで引き上げることを検討しています。

迅速化で審理期間半減のメリット?

 これによって、地方裁判所にはどのようなメリットがあるのでしょうか。意見書では民事訴訟事件全体(人証調べ事件)の審理期間を、現在の平均20.5か月から半減するとしています。そのためには、地方裁判所の事件数を管轄権の変更で大幅に減少させることが前提になります。ちなみに家庭裁判所への人事訴訟の移管等で5%〜10%程度、簡易裁判所の事物管轄の拡大で25%〜60%程度が地方裁判所から移管されると試算されています。地方裁判所は残った事件のうち、一般的な事件については迅速部で、社会的・公共的事件については専門部で迅速に処理することになります。なお、特許事件では東京地方裁判所と大阪地方裁判所のみが専属管轄をもっとしており、専門部の中にも管轄の区別が行われています。

懸念される労働条件や処遇等への影響

 ここでの問題点は、いわゆる市民訴訟の多くが家庭裁判所及び簡易裁判所へ移管されることで、各裁判所間の職員の大幅な異動や役割の変更が行われることが予想されることです。また、地方裁判所と家庭・簡易裁判所の仕事には連続性がなくなり、職員の労働条件や処遇等にも影響が懸念されると考えられています。
管轄権の変更と同時に、地方裁判所を中心に「連続的開廷」の訴訟進行方法の導入や裁判官を補佐する「地方裁判所調査官(法曹)」「専門員(非法曹専門家)」制度などの新職員制度の新設が提言されていることも重視する必要があります。
 管轄権の変更については不確定の要素が多いのですが、家庭裁判所や簡易裁判所が名実ともに市民裁判の中核になる反面、地方裁判所の役割が限定されること、職員制度や処遇制度に差別や分断が持ち込まれること、新職員制度の導入によって一般職の増員にむしろ逆行する動きになることなどの問題点があることを理解しておく必要があります。

裁判所全体の管轄見直しの構造

 
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